暑さ寒さも彼岸まで(阿部利佳)
きょう23日は、彼岸明け。彼岸にちなんだ話をつぶやいてみる。「暑さ寒さも彼岸まで」。春のこの時期、よく聞く言葉だ。彼岸の中日である春分の日を境に徐々に日が長くなり、桜の便りも届く。 では「盆々と待っていたお盆がただ三日、いらざる彼岸が七日ある」はどうだろう??年配の方は、ご存じかもしれない。私も子どもの頃、母から聞いたことがある。 これは、里唄の歌詞だそうだ。昔のでっち奉公は、正月とお盆にしか休みがなかったので、盆と同じく先祖を祭る春・秋の彼岸が七日もあるのに休めないのを恨めしく思ったとか。休みの多い今の子どもたち、働き方改革のご時世では実感が湧かない。言われなくなるのも無理はないだろう。 彼岸にちなんだ昔話もある。旅人が宿屋の夫婦の会話に震え上がったという。「半殺しにするか、皆殺しにするか」。戸の向こう側から、ひそひそ話。旅人は殺されてはたまらないと慌てて逃げ出した。しかし、何のことはない。ぼた餅を作るのに、炊き上がった米を半分つぶすか、全部つぶすか相談していただけだった。半分つぶすのが「半殺し」。全部つぶすのが「皆殺し」だ。 他にも、小豆を粒あんにすることを「半殺し」。こしあんにすることを「皆殺し」という地方もあるそうだ。 作る工程は物騒な言い方だが、出来上がったソレは、花に見立ててすてきな名前を付けてもらった。 春のお彼岸に食べられている「ぼた餅」の由来は「牡丹餅」。春のお彼岸の頃はボタンの花が咲く時期でその時期に食べられることからこう呼ばれ始めた。秋のお彼岸に食べられている「おはぎ」の由来は「お萩」。おはぎに使用する粒あんを秋に咲く萩の花に見立てて、こう呼ばれるようになったそうだ。 わが家ではもち米とうるち米を4対1で半殺し、粒あんが好み。毎年ご先祖様にお供えして、これから始まる新生活を見守っていただくようお願いしている。