一魚一会(鈴木健文)
昨年から全世界で猛威を振るい、今もなお人々の生活を脅かし続けている新型コロナウイルス。人混みを避け、人との接触を極力抑えなければならない新たな生活スタイルは、私たちの大切なコミュニケーションを奪い、これまでの生活を一変させた。 その影響もあり、趣味であるレコード屋巡りや好きなアーティストのライブといった自分にとってのルーティンとも言える日常の楽しみも制限され、それに代わり人と接することの少ない「ルアーフィッシング」が自分にとっての新たな趣味となり、行動範囲も街から自然へと大きくシフトチェンジすることとなった。 携帯を気にせず自然の中に身を置いていると、心のバランスが整っていくのがわかる。目を見張るような美しさのカワセミやチョウ、気配を感じて振り向くとタヌキがすぐそばにいたりと、これまで接点がなかったさまざまな生き物と触れ合う事ができる。魚との駆け引きを楽しむだけではなく、四季を通じ移り変わる木々の色やフィールド近くに生息する植物など新たな発見ばかりだ。アウトドアウエアに防水ブーツを身にまとい、昨年の休日の8割近くは水の上にいたと言ってもいいかもしれない。 先月まで石ノ森萬画館で開催されていた矢口高雄追悼原画展「釣りキチ三平展」に足を運んだ。2階の会場へと向かうスロープには石巻の釣りキチたちの迫力のある魚拓ギャラリーが並び、石ノ森萬画館の2代目館長を務められた矢口先生の代表作「釣りキチ三平」の貴重な原画が数多く展示されていた。先生の故郷である秋田の雄大な自然や数々の激闘を描いた名場面は釣り好きの自分にはたまらない展示であった。 今は県をまたいでの移動は自粛中だが、この状況が落ち着いたら是非とも「横手市増田まんが美術館」へも足を運びたいと思う。